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2022.12.16

100年先も残したい物語を集めて。“本を売らない”海辺の書店「百歳書店」【認定品取扱店|百歳書店】

最近行った旅行を思い出してください。写真を撮り、食事を楽しみ、お土産も買ったかもしれません。では、そこに住む人々やその地の文化には触れましたか。心を揺さぶられる出会いはありましたか。

三豊市仁尾町にある父母ヶ浜は、干潮時、水面に空が映る光景が“日本のウユニ塩湖”と称され、SNSを起点に注目を集めた三豊市の代表的な観光スポット。その美しい景色を一眼見ようと、県内外から連日多くの人々が訪れます。そのほとりに静かにたたずむ「百歳書店」は、書店と名乗ってはいますが、書籍は販売していません。店内には色とりどりの地域産品のそばに、小さな本が並んでいます。この本は何なのか、何のために店を始めたのか、店主・今川亜由美さんにお話をうかがいました。

この風景、ここでの暮らしを、100年先も残すために

今川さんは、三豊市仁尾町出身。2017年に、ご縁があって父母ヶ浜の一角の土地を譲り受けることになりました。当時はSNSで父母ヶ浜が話題になり始めた頃。今川さんは、観光客の多くが、美しい夕陽を写真に収めてはそのまま帰っていく姿を見て、「もったいない」と感じていました。

「父母ヶ浜を、単なる“流行りのインスタ映えスポット”にしたくありませんでした。ここで生まれ育った者として、地域の価値を高め、地元の人に恩返ししたい。特に、『ちちぶの会』のストーリーをたくさんの方に知ってもらいたいと思いました」

ちちぶの会とは、父母ヶ浜の景観を守る地元の有志グループです。「地元の海岸を守りたい」という一途な思いで、25年以上にわたりボランティアで海岸清掃を続けてきました。埋立計画や漂流ゴミなど幾多の困難を乗り越え海岸を守ってきたちちぶの会のストーリーを知ったとき、今川さんはとても心を打たれたのだといいます。

今、観光客が美しい景色を楽しむ背景には、ちちぶの会を始めとする地域の長年の努力があることを知ってもらいたい。この美しい地域を100年後も残したいという想いから、2021年、地域産品とともに地域のストーリーを伝える「百歳書店」をオープンしました。
2017年頃から注目され始めた父母ヶ浜。いまや人気の観光スポットに

商品の背景にある“物語”を手に取るお店

父母ヶ浜の絶景ポストカードやジュース、スイーツなどの色とりどりの地域産品のそばに、青や白の本が並びます。これが、百歳書店の名前の由来。この本に、それぞれの地域産品に秘められた、100年先も残したい物語が書かれているのです。この地域で商売をしてきた生産者・販売元に話を聞き、「どんな困難があったか」「何を続けてきたか」「何を変えてきたか」など、その人にしか分からない地域と商品のストーリーを本にまとめました。

「青い本がモノをつくる人たちの物語で、白い本が『ちちぶの会』のように、モノは持っていないけど地域に根差して活動している人たちの物語です」(今川さん)

旅先でお土産を買うことはよくありますが、生産者の顔と物語を見ながらお土産に出会えるお店は、なかなか見たことがありません。百歳書店は、この地域にはどんな人がいて、どんな食材や文化が活かされているのかなど、普通の旅ではなかなか見えてこないストーリーに出会える場所です。
明るい店内には地域産品とともに、その生産者たちの紹介が並ぶ
商品近くの本を開くと、生産者の想いや商品の背景を知ることができる

市内各地の頑張る人々と、観光客をつなぐ

百歳書店では、三豊市認定の地域産品「みとよのみ®︎」認定品も数多く取り扱っています。まるく農園「完熟ドライフルーツ」、三豊オリーブ株式会社「エキストラバージンオリーブオイルあかつき」など、仁尾町の生産者が手掛けた産品にも出会えます。

今川さんおすすめの品をうかがうと、“どれも魅力的で選べない”と前置きしながら、

「風の谷ファームの藤田さんは、どんどん新しい商品を持ってきてくださいます。一生懸命頑張っている姿を見ると、応援したいなと思います」(今川さん)

「風の谷ファーム」の品々は、三豊市の厳しい山奥、山本町河内地区の気候を生かして育てた野菜やフルーツを、無添加・手作りで加工しているのが特徴。百歳書店は、市内各地の味覚と父母ヶ浜を訪れた人々とをつなぐ、重要な役割を担っています。
山本町「風の谷ファーム」自慢の無添加・手作りの品々が並ぶ

百歳書店が伝えたいこと

オープン以来、多くの人に物語を伝えてきた百歳書店。ちちぶの会も活動を続け、その存在を知る人が増えた結果、月1回の父母ヶ浜の清掃活動には、移住者や町外の人を含む子どもから大人まで、総勢120名以上が集まるようになったといいます。

今川さんが百歳書店を通して訪れる人々に今伝えたいことをうかがいました。

「ぜひ、それぞれの本を手に取っていただき、この地域の人々がどういう思いでものづくり、地域づくりをしてきたかを知っていただければと思います。この本には、写真には映らない物語が詰まっています」(今川さん)

美しい砂浜のそばにある百歳書店は、きょうも市内外の人々に地域の物語を伝えています。一味違う地域体験をしてみたい方は、ぜひ三豊市仁尾町父母ヶ浜「百歳書店」を訪れてみてください。

三豊市は、地域の農林水産物を素材として生み出された産品を地域産品「みとよのみ®︎」に認定しています。社会的・環境的価値の高い取組を実践している生産者が生んだ地域産品をチョイスすることは、地域の個性を愛し、農畜水産の未来をつくる一助となります。

取扱店情報

取扱店

百歳書店

所在地

〒769-1404 香川県三豊市仁尾町仁尾乙2686-3

営業時間

13:00-18:00

※天候によっては営業時間が変更になる場合があります。最新の情報はSNSをご確認ください

定休日

月曜日、火曜日

連絡先

0875-23-7177(営業時間内)

SNS

百歳書店 Instagram

百歳書店 facebook

※最新情報は直接店舗にご確認ください

Writer
古市 綾美
三豊市農林水産課 地域おこし協力隊
三豊市出身。関西でWEBや広告の企画・制作を経験した後、2022年8月にUターン。三豊市の農林水産物のプロモーションを担当しています。
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